相続税とは
相続税は親族などが死亡したことにより財産を承継した場合や遺言により財産を譲り受けた場合に生じる税金です。亡くなった方が死亡した時点で所有していた財産が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超えていた場合に納税の義務が発生し、財産を受け取った人が受け取った財産の割合に応じて相続税を納めなければならないことになっています。
遺産の考え方
現金・預金、不動産の他、車・書画骨董等の動産や死亡に伴い相続人が受け取る生命保険金等も遺産に含まれます。これらの財産はすべて時価で評価することになっていますが、土地や建物などの不動産は相続税評価額(土地の場合は路線価もしくは固定資産税評価額をベースに計算、建物は固定資産税評価額で評価)で評価されますので実際の時価よりかなり低くなります。また、家族が住んでいた家や事業を行っていた店舗などは更に評価額が軽減される制度がありますし、生命保険金も一定額が非課税とされますので、遺産総額を算出する際にはこういったことも考慮する必要があります。
相続人と法定相続人
相続人の範囲や法定相続分は民法で定められています。死亡した人の配偶者は常に相続人となりますが、民法に定める法定相続分は相続人間で遺産分割の合意ができなかった時の遺産の取り分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。
相続人 | 法定相続分 | |
①子供がいる場合 (第1順位のケース) | 配偶者 | 2分の1 |
子供 | 2分の1 (複数いる場合は均等按分) | |
②子供がいない場合 (第2順位のケース) | 配偶者 | 3分の2 |
父母、祖父母 | 3分の1 (複数いる場合は均等按分) | |
③子供も父母もいない場合(第3順位のケース) | 配偶者 | 4分の3 |
兄弟姉妹 | 4分の1 (複数いる場合は均等按分) |
注1. 第1順位の子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。
注2. 第2順位で父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。
注3. 第3順位の兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。
相続税額の算出方法
具体的な相続税額は以下のステップで算出します。
①遺産総額 | 亡くなった方の死亡した時点の財産総額 |
②正味遺産額 | ①の遺産総額からから非課税財産(墓所・仏壇など、生命保険金のうち一定額)、葬式費用、借入金等の債務を控除し、相続開始前3年以内の贈与財産を加算して算出 |
③課税遺産額 | ②の正味遺産額から基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を控除して算出 |
④相続税の総額 | ③の課税遺産額を法定相続分通りに分けたものとして相続税の総額を計算 |
⑤各人の相続税額 | ④の相続税の総額を実際に各相続人が相続した割合に応じて按分して計算。なお、実際に各人が納付する相続税額は、このようにして按分して計算した相続税額から、各種税額控除額(財産取得者に配偶者がいれば「配偶者の税額軽減」など活用できます)を差し引いた金額となります |
相続税の速算表
上記④を計算するに当たって使用される相続税の速算表は以下の通りです。
課税遺産×各相続人の法定相続分 | 税率 | 控除額 |
~1000万円以下 | 10% | − |
1000万円超~3000万円以下 | 15% | 50万円 |
3000万円超~5000万円以下 | 20% | 200万円 |
5000万円超~1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超~2億円以下 | 40% | 1700万円 |
2億円超~3億円以下 | 45% | 2700万円 |
3億円超~6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超~ | 55% | 7200万円 |
相続開始後の申告等手続き
相続の開始があった時から申告と納付が行われるまでの間、おおむね下記のような流れで作業が進んで行きます。
被相続人の死亡(相続開始) | |
葬儀 | 死亡届の提出 |
↓ | 葬儀費用の領収書の整理 |
初七日法要 | 遺言書の有無の確認 |
↓ | 法定相続人の確認 |
四十九日法要 | 遺産・債務の確認調査(残高証明書等の入手) |
↓ | |
相続の放棄又は限定承認 (注1) | |
↓ | 相続人の確定(戸籍謄本・印鑑証明書等の入手) |
所得税の申告と納付 (注2) | 個人事業の所得計算 |
↓ | 遺産の評価 |
財産・債務説明 | |
遺産分割協議と協議書作成 | |
相続税の申告と納付 (注3) | 相続税申告書の作成 |
相続登記 | |
銀行等名義変更手続き |
注1. 相続の放棄又は限定承認は相続開始から相続開始から3ヶ月以内
注2. 所得税の申告と納付(準確定申告)は相続開始から4ヶ月以内
注3. 相続税の申告と納付は相続開始から10ヶ月以内
相続税と贈与税の改正
平成25年度の税制改正大綱において、以下のような相続税と贈与税の見直しが盛り込まれました。相続税本来の目的である格差固定化の防止や、富の再分配を強化して行くという観点、及び、高齢者が保有する資産をより消費性向の高い若年世代に移転することで需要を喚起し、経済活性化を図るという観点から導入されたものです。これらの改正は平成27年1月1日以降の相続や贈与について適用されます。
【相続税】
①基礎控除について以下の見直しを行う。
5000万円+1000万円×法定相続人の数 → 3000万円+600万円×法定相続人の数
②税率構造を下記の通り見直し、最高税率を50%から55%に引き上げる。
改正前 | 改正後 | ||
1000万円以下の金額 | 10% | 同左 | |
3000万円 〃 | 15% | 〃 | |
5000万円 〃 | 20% | 〃 | |
1億円 〃 | 30% | 〃 | |
3億円 〃 | 40% | 2億円以下の金額 | 40% |
3億円 〃 | 45% | ||
3億円超の金額 | 50% | 6億円 〃 | 50% |
6億円超の金額 | 55% |
③未成年者控除及び障害者控除を次の通り引き上げる。
未成年者控除
20歳までの1年につき6万円 → 20歳までの1年につき10万円
障害者控除
85歳までの1年につき6万円(特別障害者は12万円) → 85歳までの1年につき10万円(特別障害者は20万円)
【贈与税】
①贈与税率を下記の2つの構造区分に分け、高額贈与に対しては最高税率を50%から55%へ引き上げる。
改正前 | 改正後 | ||
200万円以下の金額 | 10% | 同左 | |
300万円 〃 | 15% | 400万円以下の金額 | 15% |
400万円 〃 | 20% | 600万円 〃 | 20% |
600万円 〃 | 30% | 1000万円 〃 | 30% |
1000万円 〃 | 40% | 1500万円 〃 | 40% |
3000万円 〃 | 45% | ||
1000万円超の金額 | 50% | 4500万円 〃 | 50% |
| 4500万円超の金額 | 55% |
改正前 | 改正後 | ||
200万円以下の金額 | 10% | 同左 | |
300万円 〃 | 15% | 〃 | |
400万円 〃 | 20% | 〃 | |
600万円 〃 | 30% | 〃 | |
1000万円 〃 | 40% | 〃 | |
1500万円以下の金額 | 45% | ||
1000万円超の金額 | 50% | 3000万円 〃 | 50% |
3000万円超の金額 | 55% |
②相続時精算課税制度の適用要件を下記の通り見直す。
事業承継税制
平成21年度の税制改正によって、中小企業の事業承継を支援するため、経済産業大臣が認定した中小企業者の株式等の一定の贈与や相続などにつき、その贈与や相続などにより取得した株式などに対応する贈与税・相続税の納税が猶予される制度が導入されています。
相続税においては、後継者である相続人などが、認定中小企業者の株式などを先代経営者である親族から相続などにより取得し、その会社を継続して経営していく場合には、その後継者が納付すべき相続税のうちその株式等の課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます
贈与税においては、後継者である受贈者が、認定中小企業者の株式などを先代経営者である親族から一定以上贈与により取得し、その会社を経営していく場合には、その後継者が納付すべき贈与税のうちその株式等に対応する贈与税の全額の納税が猶予されます。
相続税の具体的な対策について、項目別に簡単に説明しています。
参考になさって下さい。
墓地 | 相続税法上の非課税財産であるため、生前に購入しておいた方が良いです。 |
生命保険金 | 500万円×法定相続人の数だけ非課税となります。非課税枠を使い切っていないような場合には追加での保険加入を検討するのも良いです。 |
小規模宅地の評価減 | 自宅は330㎡、事業用地は400㎡まで土地の評価が最大で80%引きになるので、少しでも地価が高い土地で評価減を採用するようにすると良いです。 |
遊休地 | 遊休地のままなら100%の評価になるところを、建物を建てて第三者に貸し付けたり、そのまま貸し付けたら、借地権や借家権割合に応じた減額が受けられます。 |
自宅と貸家 | 自宅の隣地に貸家を建てているような場合には、自宅と貸家の境界の位置を貸家部分の評価減のメリットを最大限活用することが出来るように考えてみることも可能です |
非上場株式 | 上場株式には節税の余地はありませんが、非上場株式の場合、純資産価額方式或いは類似業種比準価額方式により株式を評価することとなり評価額を下げることが可能です。前者は、会社の総資産や負債を相続税の評価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税等相当額を差し引いた残りの金額により評価する方式であり、後者は、類似業種の株価を基に、評価する会社の一株当たりの配当金額、利益金額及び純資産価額の三つで比準して評価する方式です。例えば相続税の評価が時価より低い不動産を借入金により購入することで総資産額を引き下げたり、負債を増加させることが出来ます。 |
事前贈与 | 贈与税の1年間の基礎控除額である110万円の枠を利用して、毎年複数の法定相続人に対して贈与して行くと、その分だけ遺産総額が減らせます。但し、毎年110万円ずつ定期的に現金や預金で贈与がなされた場合には、連年贈与とみなされ、その総額について贈与税が課されることがあるので注意が必要です。 |
配偶者控除の利用 | 配偶者に対して居住用の財産を贈与した場合には、2000万円まで贈与税が無税になります。一定の条件が設定されていますので、これを満たすことが必要です。 |
相続人 | 養子縁組により相続人の数を増やすことで生命保険金の非課税枠や基礎控除額が増加し、相続税の税率が下がるので節税策になります。但し、養子の人数に制限があって、実施がいる場合は1人まで、いない場合は2人までとなっています。また、孫が養子となっている場合、孫の相続税額は2割加算されます。 |
相続税に関連した当事務所のサービスは以下の通りです。
節税対策・事業承継対策 | 現在の財産の状況や事業の状況などをヒアリングし、現時点での相続税額のシミュレーションを行います。その上で、今後取るべき効果的な節税対策や事業承継対策のポイントをまとめ、ご提案させていただきます。 |
遺産分割協議書作成 | 遺産分割協議書を作成するのは、①相続人全員の合意内容を明確にするため、②正確な記録を残して、後で無用なトラブルが起きないようにするため、③不動産や預貯金、株式、自動車等の名義変更手続きのため、④相続税の申告書に添付するため、といった重要な目的があります。相続税の申告が必要ないケースでも、①から④の目的がありますので、遺産分割協議書の作成をお勧めします。当事務所では遺産分割協議が調っている場合はその内容に基づき、調っていない場合は相続人協議の場への立ち会いも含めて協議成立のためのお手伝いをさせていただき、最終的に相続人様の意向に沿った遺産分割協議書を作成致します。 |
相続税申告書作成 | 最終的に相続税の申告が必要な場合は遺産分割協議書に基づき相続税の申告書を作成します。署名押印の際には、必ず作成した遺産分割協議書と相続税申告書の内容について、最終のご説明をさせていただきます。署名押印いただいた相続税申告書は税務署へ提出し、税務署受付の控えをお返しいたします。 |
その他 | 相続財産の中に不動産があり名義書換えの登記手続きをしたいとお考えのお客様は、当事務所が提携している司法書士に相続登記の手続き代行を依頼することも出来ます。 |
相続税申告までのサービスの流れは以下の通りです。
1.初回面談
直接ご面談の上、相続税の基本的な仕組み、今後のスケジュールをお示しすると共に、揃えておいていただきたい資料や書類等をお知らせします。
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2.報酬見積書提示
大まかな遺産総額と相続人の数が分かりましたら、本格的な作業に入る前に、遺産総額と相続人の数により決定される報酬額の見積書を提示します。報酬料金の目安は遺産総額1億円、相続人が3人の場合で100万円程度です。遺産総額と相続人の数が大まかにでもわかれば、初回面談の際に料金をお示しすることも出来ます。この見積書提示の段階で当事務所に作業を依頼されるかどうかを決定していただければ結構です。この段階で相続税の申告が不要であることが分かり、以後の作業も必要ないということであれば、ここまでの料金は一切かかりません。また、申告までの報酬料金で折り合いがつかない場合も料金を頂くことはありません。ちなみに、相続税の申告自体は不要であっても、今後の相続に備えて遺産総額をきっちり把握しておきたい場合や遺産を分割して分割協議書を作成しておきたい場合等は、通常の相続税申告と同様の作業を行い書類も作成しますが、この場合の報酬料金は通常料金の40%引きとなります。
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3.財産評価
相続税申告書を作成するために必要となる資料や書類等を頂いたり、当方で収集したりして相続財産の評価額を計算・集計します。準確定申告が必要な場合には、同時進行で準確定申告書の作成を致します。
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4.相続税の概算額の提示
収集した資料等をもとに、相続税の概算額を試算してお客様にご報告します。遺産分割は、それを相続人の間でどのように分けるかによって支払う相続税の金額が変動したりします。お客様からのご要望をお聞きしながら、遺産分割の仕方による有利・不利等のアドバイスをさせていただきます。
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5.遺産分割協議
相続人様の間で遺産分割協議をしていただき、遺産をどのように分けるかを決めていただきます。その決定に基づき、遺産分割協議書を当事務所にて作成致します。
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6.相続税申告書の作成・提出と相続税の申告・納付
相続財産の評価書類及び遺産分割協議書にしたがって相続税申告書を作成し、内容をご説明し最終確認いただいた上で相続人様の押印をいただきます。その後管轄の税務署に当該申告書を提出致します。この際、相続税の納付書をお渡ししますので、お客様にて申告期限までに相続税の納付をしていただくことになります。
相続に関してご相談になりたいことがある方は、下記までお気軽にお問い合わせ下さい。
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