このページでは、個人が新規開業するにあたって留意しておいた方が良いことをいくつかまとめました。参考になさって下さい。
届出
個人で事業を始める際には、下記のような申請や届出が必要になります。
期限に注意しながら申請・届出を行なうことが必要です。
◎は必須項目、〇は提出が望ましい項目、△は必要に応じて提出する項目です。
届出先 | 申請書・届出書 | 必要度 | 提出期限等 |
所轄税務署 | 個人事業の開業届出書 | ◎ | 事業開始の日から1ヶ月以内 |
〃 | 青色申告承認申請書 | 〇 | 原則として開業日から2ヶ月以内 |
〃 | 棚卸資産の評価方法の届出書 | △ | その年分の確定申告期限まで |
〃 | 減価償却資産の評価方法の届出書 | △ | 同上 |
〃 | 給与支払事務所等の開設届出書 | △ | 開設日から1ヶ月以内 |
〃 | 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書 | △ | 適用を受けようとする月の前月の末日まで |
〃 | 青色事業専従者給与に関する届出書 | △ | 原則として青色事業専従者を有することとなった日から2ヶ月以内 |
〃 | 消費税課税事業者選択届出書 | △ | その年の末日まで |
社会保険事務所 | 健康保険・厚生年金保険新規適用届 | △ | 適用事業所になった時から5日以内 |
〃 | 新規適用事業所現況届 | △ | 同上 |
〃 | 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 | △ | 資格取得の日から5日以内 |
〃 | 健康保険被扶養者届 | △ | 同上 |
労働基準監督署 | 労働保険保険関係成立届 | △ | 保険関係成立日から10日以内 |
〃 | 労働保険概算保険料申告書 | △ | 保険関係成立日から50日以内 |
〃 | 労働保険代理人選任届 | △ | 速やかに |
〃 | 就業規則届 | △ | 常時10人以上の労働者を使用するとき |
公共職業安定所 | 雇用保険適用事業所設置届 | △ | 事実のあった日から10日以内 |
〃 | 雇用保険被保険者資格取得届 | △ | 採用月翌月10日まで |
所得の計算
個人で事業を開始した場合、毎年の事業で得た収入から必要経費を控除して事業所得(不動産の貸し付けによる所得は不動産所得)を計算します。事業所得の総収入金額と必要経費には以下のようなものが含まれます。
(1)総収入金額
総収入金額には、それぞれの事業から生ずる売上金額のほかに、次のようなものも含まれます。
イ 金銭以外の物や権利その他の経済的利益の価額
ロ 商品を自家用に消費したり贈与した場合のその商品の価額
ハ 商品などの棚卸資産について損失を受けたことにより支払いを受ける保険金や損害賠償金等
ニ 空箱や作業くずなどの売却代金
ホ 仕入割引やリベート収入
(2)必要経費
必要経費とは、収入を得るために直接必要な売上原価や販売費、管理費その他費用のことをいい、例えば、次に掲げるようなものがあります。 家事上の経費は必要経費になりませんが、家事上の経費に関連する経費のうち、事業所得を生ずべき業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができる場合のその部分に相当する経費の金額は必要経費となります。
イ 売上原価
ロ 給与、賃金
ハ 地代、家賃
ニ 減価償却費
(3)必要経費の特例
事業に専ら従事する親族がある場合、以下の区分により必要経費の特例が認められています。
【青色申告者の場合】
事業主と生計を一にする配偶者その他の親族が、事業主の事業に従事することができると認められる期間の1/2を超える期間、その事業に専ら従事することにより、税務署長に提出された届出書に記載された範囲内の給与の支払を受けた場合には、事業主はその給与の額のうち労務の対価として適正な金額を事業所得の必要経費に算入することができます。
【白色申告者の場合】
事業主と生計を一にする配偶者その他の親族が、事業主の事業にその年を通じて6ヶ月を超える期間、その事業に専ら従事した場合には、事業主は、親族1人につき最高50万円(配偶者の場合には最高86万円)を必要経費とみなして、事業所得の計算をすることができます。
税金の計算
サラリーマンの場合、上記必要経費に該当する部分が給与所得控除という形で給与収入に応じて一定額が控除されていますが、所得を合計してから税額計算までは全く同じプロセスとなります。
すなわち、所得控除として雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除が控除され、控除後の金額について、下記の所得税率表に基づいて所得税額が計算されます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | − |
195万円超~330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超~695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超~900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
開業費と創立費
開業の前後に支出した経費について開業初年度に仕訳する場合、開業費と創立費という2つの科目が出てきます。どういう項目が開業費になって、どういう項目が創立費になるのかということについて、法人との違いにスポットをあてながら、その会計処理方法も含めて以下に解説します。
開業費とは
個人事業主の場合は、会社・法人の場合のように、「特別に支出した費用」に限定されず、経常的な費用も開発費に計上できます。また、その時間的な範囲についても、会社・法人の場合のように、「会社設立後」に要した費用に限定されていません。たとえば、開業の準備に何年もかかる場合があっても、開業の前年度以前に発生した開業準備の費用をすべて一括して開業費として処理をすることが可能です。
経常的な経費の具体例
特別に支出した経費の具体例
注)免許業種のような許認可取得費用も特別に支出した費用として開業費に含まれます。
会計処理
開業準備に要した費用は、すべて一括して開業費勘定(繰延資産)で処理をします。ただし、20万円未満であれば、支出した年度の費用として処理できますが、この場合は、個別に仕訳を行うことになります。なお、いずれの場合も、帳簿上の日付は開業日の日付とします。
注)開業日とは、個人事業主の場合は、個人事業の開業等届出書に記載した[開廃業日]となります。
繰延資産となる場合は、決算時に償却したとき、その償却額を開業費償却勘定または繰延資産償却勘定(営業外費用)の借方と開業費勘定の貸方に記入します(振替仕訳)。
償却期間・償却額
償却費の金額については、60ヶ月の均等償却、または任意償却のいずれかの方法によることとされています。任意償却による場合には、支出の年に全額償却してもよく、あるいは、まったく償却しなくてもかまいません。また、いつでも償却費として必要経費に算入することもできます。しかし、開業した年に開業費を一括して経費にしてしまうと、赤字になる場合もあるので注意が必要です。そこで、年度末に決算をして利益が確定してから償却費を決めるということがよく行われます。ただし、青色申告の場合は、その年の赤字を3年間繰り越すことができるので、その年に全額経費処理(損金処理)するのが一般的です。
創立費とは
創立費とは、会社の設立登記までに会社を設立するために支出した諸費用を管理するための勘定科目をいいます。したがって、個人事業の場合、この科目が使用されることはありません。
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